名刺入れ

 ちぺらです。今回は名刺入れを作っていきます。

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完成品

全体的な構成としては以前作ったカードケースをベースにしており、型紙の変更点は名刺が入るように横幅を少々引き延ばしたり、かぶせ側のポケットの形を変えた程度です。カードケースの記事はこちらからどうぞ。

cipher-413.hatenablog.jp

今回の変更点は主に製作工程。カード段にステッチをかけて丈夫にし、加えて外周全体に捻を引いて全体の印象を引き締めてみました。

 まずは材料を切り出していきます。今回使った革はイタリアのM.P.G製「ニューヨーク」。イタリアなんかアメリカなんかはっきりせえ 裏打ちは家に転がっていたアメ豚を使いました。

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切り出した革にけがき線を入れておく

今回も裏地を打って床面が見えないようにするので、ボールペンでガンガンけがき線を入れていきます。中心線は最低限入れておいた方が後々楽になります。

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貼れるところに豚革を貼っておく

続いて各パーツに豚革で裏打ちをしていきます。マチとかぶせ側ポケットは何も考えずに作業できますが、本体はいささか思うところがあるので一部のみ裏打ちをしています。また、この段階で処理できるところはコバ処理まで済ませてしまいます。

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ポケットを接着して縫製

はい、思うところというのがこれです。実はさっき裏打ちしたところはカード段の下側ポケットだったので、このようにもう一枚革を縫い付ければカード段の中にもしっかり裏地をつけることができます。いま見えているところがメインポケットになるので縫い目をつぶして裏地をベタ貼りすれば名刺入れの一丁上がりというわけですね。

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裏打ちしてかぶせ側ポケットも接着

ホワイトバランスが狂っている気がしますが気にしないように。今回は外周にも捻を入れたいので、変則的ではありますがここで外周のコバ処理を済ませ、捻も引いてしまいます。あとはマチを取り付けて外周をぐるっと縫えば完成!

 今回は芯材などは特に入れていませんが、ちょっと厚めの芯材を入れて立体感を出したり、バネホックで開閉するようにしてみても面白いかもしれませんね。あとは駒合わせ縫いで厚めのマチを付けるとか。いやいろいろ考えてはいるんですけど、時間がないんですよ時間が。ほんとに……

 

長財布(小改造版)

 ちぺらです。少し前になりますが、以前作った長財布の亜種の画像をサルベージしたのでご報告です。依頼に従って前回の財布にいくらかカード段とポケットを追加しています。

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完成品

 長財布は形こそ単調ですが、カード段が増える分パーツも増えて大変です。かといって特に作業量を減らす裏技があるわけでもなく、最初はパーツを切り出してコバを処理する作業がひたすらに続きます。

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カード段パーツ。これ全部コバ磨いて捻引きしないといけない

今回はカード段の最下段は外装とお揃いの赤にしてみました。この方が統一感が出て素敵だと思いませんか?(ヌメ革が足りなくなったための苦肉の策)

 外装には前回の二つ折り財布と同じくルガトーの赤を使っています。薄くてもハリのある丈夫な革ですが、処理剤仕上げ?らしく長期間エイジングしたらどうなるかはちょっと想像つかないのが面白いところです。外装とベース部に続いてコインポケットとマチを作り、その他のパーツと接着していきます。

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危ねえ……糸足りなくなるとこだった……

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意外と分厚くなってしまった

少し前から接着剤をダイアボンドに変えてみたのですが、これがいい感じ。ダイアボンドをはじめとするクロロプレン系接着剤はその色(真っ黄色です)から「はみ出したらみっともないのでは」と敬遠していたのですが、大変伸びが良く、さらに浸透が早いので貼り合わせたときに接着面に層ができないので、実は見映え良く仕上がることがわかりました。以前まで使っていたGクリヤー(スチレン・ブタジエン系)は確かに乾燥前は透明ではあるものの、コバをやすりがけしたりして塵を拾うと真っ黒の層状になって目立つのが気になっていたのでこれは嬉しいポイントです。ただ、ダイアボンドはくさい。キツめの溶剤臭がします。換気をしないとキマってしまいそうです。

 というわけで完成したものがこちら(中身)

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完成品を別アングルから(フォトブースほしい、買ってくれフォロワー)

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左:去年作ったやつ(自分用) 右:今回の財布

カード段を追加したため若干巨大化していますが、普通に使う分には支障はないと思います。やはり捻を引くとコバが丈夫になるというのもありますが、見た目にも映えて良いですね。そしてやはり焦げ茶のコバは全体が引き締まって良い(自画自賛) 今のところ糸とコバの色は揃えていますが、カラフルなものも作ってみたいところです。自分の色彩センスに全く自信がないので踏み出せないでいますが。





イヤホン(QoA Vesper)の修理

 ちぺらです。先日悲しいことがあったので、今回はお気持ち表明から入ります。

 あれは数日前のことでした。いつものようにイヤホンで音楽を聴きながら帰ってきて、玄関で靴を脱ごうと屈んだとき、イヤホンのケーブルが膝か何かに引っかかったのです。そのまま勢いよく立ち上がった拍子にケーブルに引っ張られてイヤホンが耳から外れ、そのまま三和土に勢いよく……

 断線はかろうじてまぬがれたらしく、こんな無残なナリでも健気に音を鳴らしています。というわけでシェルを再接着すれば蘇生すると判断しました。まあ断線していてもこの程度の配線密度なら十分修理できたと思いますが……

 何はともあれ、接着です。手持ちの接着剤だとエポキシが一番良さそうだったので、エポキシでくっつけることにします。

 

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出しすぎた。こんなにいらん

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爪楊枝の先で塗り込み、手で軽く圧着して……

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固定!

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丸1日乾燥させたものがこちらになります(3分クッキング)

  周囲に巻いたメンディングテープが接着剤にくっつくかもと危惧していたのですが、幸いにしてそのようなことはなく、きれいに剥がれました。マスキングテープと迷ったのですが、結果的にこちらで正解だったようです。ただシェルに接着剤の跡が残っているので、これをウエスで拭きとってやります。

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一部欠けは残ったものの、普段使いには問題ないのでヨシ!

最後に念のため動作チェックをして……

 修理完了!皆さんも有線イヤホンを使うときは気をつけましょうね!

 なお、言うまでもないことですが本記事の内容で修理をすると恐らく保証は効かなくなると思われます。ご自身で試す際は自己責任でお願いします。

二つ折り財布・微改良

 ちぺらです。例によってフォロワーに脅されたので財布を作ります。赤いのをご希望とのことで、今回は外装にルガトショルダーの赤をチョイス。ベルギーを代表するレザーです。美しい透明感が特徴で、光の加減でショルダー革特有のトラ模様が浮かび上がります。

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完成品

二つ折り財布自体は作ったものの型紙があるので、今回もそれに沿って製作しますが、前作の反省点を踏まえていくつか改良を加えてあります。具体的にはコインケースのバネホック(俗にいうスナップです)の頭がカード段に干渉してしまって黒い跡がついてしまうことと、1.0mm厚の革を使ったので財布全体が分厚くなってしまったことですが、今回はこれらの点を解消すべく工夫をしてみました。

 まず、バネホックのカード段への干渉について。前作の写真を見てもらうとわかりますが、コインケースのフラップを貫通してバネホックを取り付けていました。前回は真鍮製のバネホックを使っていたので、この頭が摩擦で徐々にカード段の革に擦りつけられて黒ずんでしまった…というのが実際のところだと思われます。まあ写真で見せてもらっただけで、現物は見てないんですが。というわけで、今回は(都合よく家に転がっていた)埋め込みタイプのバネホックを使います。そのままでは革がへたった時にバネホックが根本からぽろっと取れてしまわないとも限らないので、芯材を貼り付けて強度を確保すると同時にバネホックが表に響かないよう対策しています。

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芯材で強度確保(この下にオス側バネホックが取り付けてある)

 次は厚みの問題です。今回は全体を0.8mm厚の革で作っているので前ほどは分厚く無いですが、さらに薄くするために強度が不要なところは豚革に変えました。具体的には札入れの内装をすべて豚にしています。

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全面豚革を使用した札入れ

ほんとはコインケースの内張りも豚にしたかったんだけど構造的に断念。まじめに型紙引き直せばできるかも。とにかく、涙ぐましい努力のおかげでコバの厚みは1mmぐらい薄くできた気がします。コバはいつものように蜜蝋で磨いてありますが、これが大概めんどくさいので処理剤デビューを検討中。でも蜜蝋の方が耐久性が上な気がして踏み出せない……

 ちなみに今もう一つ財布作ってるんですが、材料を買い忘れるという大ポカをやらかして作業が停滞しております。つよつよリマインダーがほしい。

 追記:今までつくったものをTwitterのモーメントにまとめました。

twitter.com

カードケースを作る

 ちぺらです。今回もまたフォロワーに脅されたので(前回とは別人です)カードケースを作ります。

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完成品

 「クレジットカードサイズが10枚程度、名刺は入らなくてよい、できるだけ薄く、小さく」というオーダーを貰ったので、横幅をカードが入るぎりぎりまで詰め、カードポケットの出っ張りも実用上問題ない範囲でできるだけ削ったデザインで型紙を起こします。今思えば横幅はあと1mmぐらい削っても支障なかったかもしれない。

 また、「できるだけ薄く」を実現するため、0.8mm程度まで漉いた革にこれまた薄い豚革を貼り合わせ、強度を保ったまま革の厚みを減らします。

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豚革で裏打ち

というのも、革というのは銀面付近の0.4mm程度の部分が最も強度があり、そこから下は大して強度に影響しないという性質があるのです。というわけで、余計なところを削り取って銀面どうしを貼り合わせることで薄くて強い革になるというわけです。あとついでに毛羽立った床面が見えなくなるので高級感がアップ(個人の感想です)

 そうそう、革ですが、発注者たっての希望でイタリアはValdarno製のトスカーナを使用しています。なんでもこの青がイメージに一番近いらしく… 皆さん、青好きを公言する人に正常な人間はいません。やつらは少しでもイメージと違う青を提示されると発狂するので気をつけましょう。

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内部

 形としてはごくごく一般的な通しマチ名刺入れの構造を踏襲しています(ただし前述のように横幅を削り込んでいるので名刺は入らない)。メインポケットに5~6枚、カード段に2枚、かぶせ側ポケットに2枚のカードを入れて厚みは最大16~17mmといったところでしょうか。総裏張りかつ力のかかる部分は返し縫いをし、コバも蜜蝋で仕上げているので永く愛用していただけると思います。

ラウンドファスナー長財布を作る

 ちぺらです。今回はTwitterのフォロワーに脅されて財布を作ったのでご報告です。

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完成した財布

ご本人(田中琴葉P)から「琴葉のキャラカラーで作れ」と脅されたので、琴葉カラーでもある#92CFBB[1]に近い色の革を探すところからスタートです。というのも、タンニン鞣し革はその製法から少しくすんだ色や落ち着いた色のものが多く、このようなパステル調というか淡い色合いのものはなかなか無いのです。八方手を尽くして野山を駆けずり回った結果、浅草橋のとある皮革専門店でこの革を発見しました。銀面をやすりでわずかに起毛させたオイルレザー(ブランド名も聞いたんだけど忘れた)で、使い込むと毛羽が寝ていい感じの艶が出てくると思います。内装はナチュラルのヌメ革のフルレザー仕様です(布を扱う技術がないとも言う)

 例によって製作に夢中になってしまってロクに写真撮ってないので、製作風景はダイジェストでどうぞ。

 

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よくある作例ではファスナーを布ワッペンで固定していますが、手芸屋の店員に聞いても同様のものを発見できなかったので手元にあったコバ磨き用の帆布を切って貼り付けました。ガハハ、これでワシは手芸屋店員以上ってわけや!外装の革がかなり柔らかいので、型崩れ防止とファスナーの取り付けガイドを兼ねて芯材(テキソン0.4mmを重ねて0.8mmにしたもの)を入れてあります。コバはいつものように染色して蜜蝋で磨きました。

 

出典
1. アイドルのイメージカラー - アイマスDB(情報まとめ)

ミニ財布を作る

Q. また財布作ったの?

A. うるせえ

 

 ちぺらです。数日前に突如キャッシュレスに目覚めたので、今回はカードと現金少々が入るだけのミニ財布を作っていきます。

 そもそもミニ財布とは。「ミニ財布」とか「コンパクト財布」でググって引っかかるものは、おおむね何の変哲もない三つ折り財布、変形型の二つ折り財布、現金を完全にあきらめたカードウォレットの三種に分けられるようです。このうち、三つ折り財布はお札に変な折り目がつくのが嫌なのでパス。一応現金も持ちたいのでカードウォレットもパス。ということで二つ折りを作ります。

 二つ折りといっても、前回作ったようないわゆる普通の二つ折り財布ではだいたい12x10cm程度の大きさになります。これではズボンの前ポケットに入らないので、なんとかして10x8cm程度まで削らないといけません。カードと紙幣のサイズでだいたいの大きさは決まってしまうので、なるべくギリギリを攻めたデザインにします。

 

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デザイン案の一部(字がきたねえ)

画像にもありますが、カードが6~7枚と紙幣が入る程度の容量で考えています。財布界隈ではステマの双璧の片割れとして知られるア○ラサスの薄い財布のようにパズル状にすることも考えましたが、手間を考えて今回はボツ。あくまで普通の財布の文法で作ることにします。だいたいデザインが固まったところでCADで型紙を起こして、革を切り出します。型紙公開してほしいって人はTwitterの方にリプか何か飛ばしてください。そんな人おるんかわからんけど。

 材料は前回の二つ折り財布の余りのコードバンを使いました。内装のヌメ革も家にあったのを使ったので材料費は実質0円です。作ってる最中は別に面白い写真があるわけでもないので、ダイジェストでどうぞ。

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切り出してコバ処理

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カードポケットできた

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全体を組み立てて…

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完成!

今回は全てのコバを染色してコバワックスで処理してみました。捻(コバ部に引いたライン)も引いてみたけど仕上がりはイマイチ。やっぱりネジ捻はカス、全人類玉捻を買いましょう。欲しいものリストに突っ込んであるんで石油王の方は恵んでください。

 使ってみた感想ですが、スマホと重ねてズボンの前ポケットに入れてもかさばらないので便利です。スーパー行くとかちょっとコーヒー飲むだけならこれ一つで済むので、だいぶ身軽になった気がします。

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ちっちゃい!

左のボロボロの財布が去年の頭まで使っていたキプリスの二つ折り、右が今回作った財布ですが、このサイズ差でポケットの中の快適さがずいぶん変わってきます。今回のミニ財布は実測で8.2x9.6cmほど。市販の二つ折りミニ財布と比べても小さいほうじゃないでしょうか。適当に設計したわりにはいいものができて満足です。


おまけ

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スペクトラム ブルー

太陽光に当てるとめっちゃ良い青になる